編集者
2023.11.01
出版社全落ちした男が、縦読み漫画の編集者になった話
「出版就活に大失敗し、紆余曲折を経てWebtoon編集者になった」という芝さん
出版社を目指している大学生や、漫画編集者の夢を諦めきれない方々に向けて、少しでも有意義なことを書けたらなとも思います。
目次
【芝さんプロフィール】
1998年:埼玉県に生まれる。出生体重4020g。
2003年:でんぐり返しに失敗し、首を負傷。
幼稚園に行けないことを憐れんだ父が、「キャプテン翼」を買い与える。
漫画の世界に熱中する。
2004~2017年:毎日サッカーする。人体のあらゆる部位を怪我する。
2017~2020年:早稲田大学に入学。大学生になれば自然に彼女ができると思っていたが、そんなことはなかった。
2017年~現在:就活中に出版社全落ち。株式会社ソラジマにインターン生として拾われる。怪我することなく大学を卒業し、ソラジマに編集者として正式ジョイン。
出版就活準備期:漫画編集におれはなる!
漫画編集者になりたい、という思いはずっと抱いていたものだったのでしょうか?
芝:「漫画の重みで床をぶち抜くこと」が密かな野望……というくらい漫画が好きで、漫画編集者になることをずっと夢見ていました。
でも、そんな僕を見て、周囲の人たちは言ったんです。
「趣味は仕事にするな」
「出版社の倍率やばいらしいよ」
「髪型が怖すぎる」
世知辛いですね……。
芝:周りからの助言を一蹴し、僕はこの髪型で出版社だけを受けていました。大好きな漫画に関われる最高の仕事が存在するのに、他の道に進むなんて意味がわかりません。
出版就活において、僕が最初にしたことは情報収集でした。
敵を知り、己を知らば百戦危うからず。
僕は友達が沢山いる人間ではないので、情報収集は選考体験談のブログ、掲示板での口コミ、OB訪問がほとんどでした。僕なりに情報を精査し、簡単にまとめた結果はこんな感じでした。
「運ゲー」
「もう一度選考を突破できる自信はない」
「ずっと喋ってたらなんか受かった」
ど、どういうことですか……?!
芝:どういうこと?となりますよね(笑)とりあえず「ずっと喋ってたらなんか受かった」だけを信じて、僕はひたすら趣味に没頭しました。サッカーや漫画など、自分の”好き”についてなら永久に喋っていられると思ったからです。
そして、僕が趣味を極めている……否、遊んでいる最中、本格的に出版社の選考が始まりました。
出版就活奮闘期:負けたくないことに理由って要る?
いよいよ就活がスタートしたわけですね!
芝:続々とES(エントリーシート)の締切が近づく中、僕は将棋のアマチュア2段にまで成長していました。
芝さん、一体なにを目指しているんですか……!
芝:なにをしていたんでしょうね……。迷走した結果将棋が強くなった人間にとって、出版就活は困難の連続となりました。
膨大な量のESを誤字まみれで提出し、筆記試験の解答欄を当てずっぽうで埋め尽くし、面接では将棋について語りまくる。必死に作り込んだ志望動機は、あんまり役に立ちませんでした。どの出版社でも、なぜか2~3次面接くらいまで進むことができましたが、僕の実力ではそこが限界だったようです。
2〜3次面接まで突破できた理由はどんなところにあるのでしょう?
芝:そうですね。アドバイスするとしたら……「好きな作品の好きな理由を言語化しておくと良いかも」。どの面接でも聞かれました。
「自分だけの面白いエピソードがあるといいかも」「ハキハキ喋った方が良いかも」くらいです。
ちなみに僕の場合、好きな理由はできるだけロジカルに言えるよう心がけていました。おもしろエピソードは、一週間スウェーデン人のおじさんと高知県を歩き回った話です。
なんで通過したのかはよくわかりません。落ちた面接では大体考えがまとまらず、ふにゃふにゃ喋ってしまっていたので、「ずっと(ハキハキ)喋ってたらなんか受かった」は真理かもしれません。
「1週間スウェーデン人のおじさんと高知県を歩き回った話」、確かにすごく気になります……。エピソードに引きがありますね。
芝:ですが、忘れもしない2021年4月、僕の第一志望だった出版社から不採用の通知が届きました。漫画編集者になれない。漫画に関わる仕事ができない。中学時代にサッカー選手の夢を諦めてから、二度目の挫折です。
なんと……。そこで夢を諦めてしまったんですか……?
芝:僕の忍道は「まっすぐ自分の言葉は曲げねェ」なので、他の道を模索し始めるまでに時間はかかりませんでした。漫画編集者になれないなら、漫画家になれば良い、と思ったんです。
今ではパソコンさえあれば誰でも漫画が描ける時代です。絵が下手なら練習すればいいし、話が思い浮かばないならパクれば良い。費用はクリスタ1000円、ペンタブ3000円くらいです。金もかからない。
僕は速攻で3本の読み切りを完成させ、意気揚々と出版社へ持ち込みに行きました。
行動力の鬼ですね!?それで、結果は……?
芝:……漫画家として食っていくには長い時間が必要だな、と悟りました……。とりあえずどこかに就職しなくては。そんな中で出会ったのが、ソラジマという会社です。
ソラジマとの出会い:萩原さん…! 漫画編集がしたいです……
芝:出版社で0から1のIP創出ができないのなら、1を10にするような会社に入ろう。そしてこっそり漫画を描き続けよう。
そう考えていた時、ソラジマのYouTubeアニメ事業が目に止まりました。YouTubeアニメについては全く知らなかったので、正直怪しい会社だと思いました。でも、当時の僕は、エンタメに関われて金が貰えるならなんでもよかった。
早速代表の萩原と面談の予定が立ち、僕が出版社を目指していたことや、漫画を描いていることをつらつらと話しました。
そのあたり、正直に全部話したのですね。
芝:萩原は終始厳しい表情をしながら、
「ちょうどWebtoon事業部が立ち上がってて、漫画編集者を募集してるんだよね」と言いました。
そんなことあります?数々の疑問が浮かびましたが、漫画が大好きな僕に、漫画編集者になれなかったこの僕に、突然チャンスが転がり込んできたのです。
そんなことあるんですか……。漫画のなかの話みたいです。
芝:Webtoonは成長真っ只中の市場で、出版業界だけでなく様々な企業が参入を考えているという話でした。そんな中、ソラジマはWebtoonスタジオとして圧倒的な作品数を立ち上げ、混沌極まるWebtoon業界のトップランナーを目指しているらしい。よくわからんけど凄そう。
そして、またも一切の笑顔なく、「一回飯食いにいこっか」と言われました。意味がわかりませんでした。代表陣や編集者の方と美味しいランチを楽しみ、地下の怪しいオフィスに案内され、簡単な会社紹介を受け、気づいたら選考が始まっていました。
「今日から採用関連の責任者だから、よろしくね」
芝さんは当時まだ学生ですよね……?突然インターンとして採用された?
芝:そうなりますね……。選考で学生にプロジェクトを任す度胸エグいな、と思いながら僕は精一杯頑張りました。出版社の人事は見抜けなかったようですが、僕はやる時はやる男なのですよ。
現在はインターン生でも漫画編集者として採用していますよ!
そうして、2021年9月、僕は晴れて選考を突破し、漫画編集者への切符を掴み取りました。
夢の漫画編集者:唆るぜこれは……!
今更なのですが、Webtoon編集者って何をするお仕事なのでしょう?
芝:はい。では、簡単に説明できればと思います。
まず、ソラジマのWebtoon編集者に求められるのはただ一つ。
”月に1000万円売れる作品を作ってください”ということです。
細かいビジネスモデルや今後の計画についても紹介がありましたが、難しくてよくわかりませんでした。とりあえず僕は大ヒット作品を作れば良いのです。
月に1000万円売れる作品の企画書を作る、もしくは作ってもらう。
これがWebtoon編集者の最初の仕事です。
月に1000万……いったいどうやって達成するのでしょうか……?
芝:日本で大ヒット作品が生まれるにはどうすればいいのか?そう考えた時、まず思い浮かんだのは映像化でした。その時期はちょうど「鬼滅の刃」「呪術廻戦」が映像化を経て、エンタメ業界に一大旋風を巻き起こし、経済を破茶滅茶に動かしまくっていました。縦読み漫画で映像化できる作品を作れば、1000万円売れるはず。
これこそ、僕の灰色の脳細胞が導き出した答えです。
そうこう考えている内に、死ぬほど面白い”女性向け不倫系作品”の企画書が僕の元に届きました。
不倫系作品がアニメになることはおそらくないでしょう。しかし、「サレタガワのブルー」のように、日本でWebtoonがドラマ化した例は既にあります。これならいける。僕はやる時はやる男だし、運は持ってる男なのです。こんな感じで、僕は女性向け不倫系作品を担当することになりました。
上司にやれ!と言われて女性向け作品を担当しているのではないので、入社を考えている人はその辺は安心して下さい。
なるほど!まず企画が決まり、そのあと担当編集としての業務がスタートするというわけですね。
芝:はい。企画が固まったら後は簡単です。ネーム、線画、着彩、背景、仕上げの各分野で最高のクリエイターを集め、最強のチームを作ります。最強のチーム内で、脚本から仕上げまで、リレー形式で1話の原稿を完成させる。これを繰り返します。
もっと詳しく知りたい!という方は、是非ソラジマのオフィスに遊びに来てください。オフィスを移転したので、かつての怪しい雰囲気はもうありません。
これまでとこれから:君は漫画編集者になれる
芝:正直にいうと、僕はインターン生としてソラジマで活動しつつ、出版就活に再チャレンジしようと考えていた時期がありました。
ここまできて、突然の裏切り……!
芝:しかし、僕が実際にソラジマで働く中で、“出版社に落ちてなんだかんだ良かった”と思うことが何度もありました。負け惜しみではありません。
……負け惜しみではありません。
(笑) それはなぜですか?
芝:出版社で約20名の新卒採用枠に滑り込めたとして、運よく営業や経理でなく編集部の配属になったとして、自分の作品を立ち上げるのは一体いつになるのでしょう?僕は夢破れ、チャンスを掴んだ結果、3月に作品を配信できるようになりました。
大手出版の内定者が入社するよりも早く作品を立ち上げるのです。これは本当にすごい。売れなければ誰も幸せになれないので、早ければ良いわけではありません。ただ、漫画編集者として作品を出せる機会が多いのは間違いなく良いことだと思います。
また、現在「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」と同じくらい有名なWebtoon作品は、日本にいくつあるのでしょう?
僕は0だと思っています。つまり、レジェンド級の作品を立ち上げた”日本一の漫画編集者”が一定数いる中、“日本一のWebtoon編集者”は未だ存在していないのです。Webtoon業界のすごい人達がこの記事を見ていないことを祈りますが……(笑)
最後に、編集者志望の方に向けたメッセージをお願いします!
芝:今、Webtoon編集者の誰しもが日本一になるチャンスを持っています。
そしてなんと、株式会社ソラジマでは編集者を募集中です!早速ソラジマにエントリーし、僕と日本一のWebtoon編集者を目指しましょう。待っています!
芝さん、素敵なお話をありがとうございました!