編集者
2024.02.24
自分が信じる「面白さ」を貫く——webtoonマンガ編集者・堺真里奈
「誰が何と言おうと『この部分はこれが面白いから』と自分が信じる『面白さ』を貫きたい、自分の芯を曲げたくない」
そう語るのは、編集者1作目からヒットを生み出し、現在も分析を重ねながらよりよい作品作りを目指すwebtoonマンガ編集者・堺真里奈さん。
今回はそんな堺さんに、webtoonマンガ編集者としてのこれまで、そしてこれからについて語っていただきました。
webtoonマンガ編集者のやりがい、ソラジマでの働き方について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください!
目次
堺 真里奈
webtoonマンガ編集者
好きな漫画は迷わず『銀魂』、私のバイブルです。趣味はたくさんあるので割愛。好きな科目は世界史だけど、暗記が嫌いでいつもまっさらな気持ちで教科書を楽しく読んでいるタイプ。こういう場面でふざけがち。自分の内面を言語化するのが苦手な分、感情を代弁して引き出してくれる物語や表現の世界が大好きです!
ソラジマだから、編集者1作目からヒットを出せた
初めて立ち上げた作品が11月に公開になり、初速で好成績を出してくれました。
これは、経験や技量に関係なく、入ってすぐに作品を創り世に出さなければならないという状況に置かれるソラジマだからこそ生まれたヒットだと思います。全員がプロフェッショナルという前提なのだから、「入社して間もないからわかりません」とか「できません」、なんて言っていられない。それこそがソラジマの良さで、良くも悪くもあまり多くを知らないまま走れたんです。いい意味で諦めがあったというか、「まだ1作目なんだから、難しいことをやっても面白くできるわけがない」と思って、基本に忠実なキャッチーな作りにしました。
基本に忠実だからこそ、完成度の高い脚本の出来と同じかそれ以上に、線画や着彩、仕上げ、背景まで全て何度も何度もやり直しをして作り込むことができました。
そうやってあまり難しく考え過ぎず、サクサクと気持ち良く進む展開と、視覚的なクオリティの高さを妥協せず追求したら、公開前から個人的にも「これはいけるだろう」と自信を持てる作品になりました。毎回、原稿が上がってくるたびに想像を超えるクオリティの原稿が上がってくることがすごくやりがいになったし、直接コミュニケーションをとっていないクリエイターさん同士が、成果物だけで作品への熱意を表現し、それを受け取った別のクリエイターさんも全力を尽くしてくださるという、よりよい作品を作るサイクルが自然と出来上がっていったことに一番脳汁が出ました。
自分自身が楽しく取り組むことができたことも、「この作品ならいける」という自信につながりました。やはり公開前には不安な気持ちもありましたが、手応えの方が大きかったです。
連載を続けてみての難しさを超えてベンチマークとなる作品へ
ただ、作品を担当して1年以上になるのですが、売上で見ると最初の頃に比べて結構下がってしまっています。
私は今まで、良くも悪くも日本の横読みマンガを読んできた数が圧倒的に多いので、マンガを「消費する」意識が高かったように思い、その点は大きな反省です。
似たような展開であっても、キャッチーでわかりやすく、気持ち良さからついつい課金してしまう。韓国のWebtoonは、そんないい意味でのライトさを重視して作っている作品が多いです。日本でも、Webtoonはどちらかというと気持ちよく満足感のあるエピソードを短期間で届けていくことが求められやすく、鉄則を外してしまったと思っています。それに連載が始まってみると、まだまだ面白く作り込めるのに締切がきてもうブラッシュアップできない、という歯がゆさもあります。
なので、そういう難しさと向き合いながら、離脱したポイントや面白くなかったと思うところをいろいろな人に聞いて、脚本作りに活かしています。
そうやって修正した結果と数値を分析し、落ち込んだものをどう回復させるかを引き続き考えていきたいですね。
たった一言のセリフが「いいマンガだな」と思わせる鍵
今後は今担当している連載作品のクオリティをさらに上げつつ、とことん世界観を作り込んだ、より高い没入感が得られる作品を創っていきたいと思っています。
私、マンガ大好きなオタクのくせに実はめちゃくちゃ現実主義?的なところがありまして(笑)、作品の中で少しでも無理をしていたり説得力のない箇所があると、没入感が削がれて、一気に冷めてしまうタイプなんです。でも、現実では絶対に有り得ないような状況や人間を、存在するものと錯覚させられるものの【最上級】がマンガだと思うのです。作り込まれた世界観、舞台の中で命懸けで戦っているキャラにリアルを感じ、そいつが発するこそ活きてくる言葉やセリフがある。
現実だと、カッコイイことを言いたくても、そのセリフのかっこよさを知っているから逆に何も言えないことってあるんですよね。「偉そう」とか「クサイ」と思われてしまいそうなセリフは、その状況に置かれているキャラクターにしか言えないことなんです。極端な話、小説で現代日本を生きているキャラクターに同じことを言わせても浮いてしまって、私たちの中にすとんと落ちてきません。ですがマンガなら、マンガだから膨らませられる世界があり、現実では絶対に有り得ない状況を作って、そこで言うからこそ重みの出てくる言葉を読者さんに届けることができます。
「このマンガいいな」と思う瞬間って、案外たった一言のセリフだったりするんです。
普段の日常生活の中で言ったら「何言ってんの?」と思われるようなことでも、世界観や舞台、状況を作り込むことで自然と入ってくる、時には心を震わせ感動を呼び起こすことができるのが、マンガの大きな魅力だと思います。いずれは、そうやって心に刺さるセリフがあるマンガをどんどん作っていきたいです。
ソラジマ編集者は個人競技と団体競技のいいとこ取り
ソラジマに入社するまでは、絵を描いたり編集職のような業務をしたことはありませんでした。
小さい頃からクラシックバレエをやっていて、将来は某テーマパークのダンサーになるのが夢だったんです。自分でもきっとできるという自信があったんですが、現実はそんなに甘くありませんでした。周りの人が1回見れば覚えてしまうようなダンスの振りつけでも、私は何回も見ないと覚えられなかったり、身体の作り方も動かし方も全然違う。
それに、振り返ってみれば、ですが、私は個人戦は弱かったなと気づきました。見えないゴールに向かって1人で努力することが苦手なんです。果たして、1人だけでここまで自分との戦いを突き詰められるだろうか、と考えた時に限界を感じてしまったんです。
ですが、その後ソラジマと出会えたことで私の人生は大きく変わったと思います。
ソラジマの編集者は誰かと一緒に作っていくことができる、団体競技の側面があるんです。私が「これでいいな」と満足していても、クリエイターさんたちに聞いてみると「いや、もっとここを変えたいです」と意欲的な意見が返ってくるし、他の編集者さんに見せると違った視点からのフィードバックがどんどんもらえます。そうすると、自分ではもう完成したと思っていたシーンでも、「なんだ、まだまだ面白くできるじゃん」と気づきが得られるんです。
こうしたやり取りは、学生時代にダンス部のキャプテンをしていた時と似ているように感じます。ダンス部では、4分間の作品をどんな物語にするか、15人のメンバーをどうやって見せるか、誰をどこで使うと効果的か、といった監督のようなことをやっていました。振り返ってみると、私は周囲と刺激を与え合いながら頑張れる環境、言い換えれば団体競技が向いているんだと思います。もちろん、編集職は1人で悩み考えることもあるので、ソラジマの編集職は個人競技でもあり団体競技でもある。両方のいいとこ取りができているので、私にはぴったりな働き方だと感じています。
ソラジマの面接は「どんな人間なのか」を見極めている
ソラジマが他の会社と違うな、と最初に感じたのは面接の時でした。
面接対策だと、「こう聞かれたら嘘でもいいからこう答える」というテンプレートを準備すればいい、と言われることも多いですが、私はそれが本当に心苦しかったんです。
ですが、ソラジマの面接では「将来のキャリアプランはどうですか」といった、テンプレートのよくある質問はされませんでした。質問されたのは、今まで何をしてきたか、高校の時は何をしていたか、どういう時にショックだったか・・・家族の話になった時は、「言いづらかったら言わなくてもいいですよ」とも言ってもらって、「こういう時につらかったんですね」と、言葉で表現できない、堺真里奈の本当の顔や信念みたいなのを探ってくれているような感覚でした。
面接を受けたその時の私に何ができて、どういう能力があって、選考のためにどんな準備をしたのか、何を考えて行動しているのか。そういう「私がどういう人間か」をしっかり見てくださっている感じがあって、面接で初めて楽しいと感じたんです。
編集者になり、メンバーインタビューをやるようになってから、ソラジマの面接の意味がわかるようになってきた気がします。
あらかじめ準備してきた耳障りのいい言葉だと、聞いていても現実味がわかないし、共感もしにくいんです。それよりも、「マンガ大好きなんです!それだけです!」くらい言ってくれた方が「いいじゃん」と思えるし、「このマンガのここがいい」と熱く語ってもらえた方が人となりが見えてきます。なので、将来ソラジマに入りたいと考えている方は、決して綺麗な言葉でなくてもいいから、自分の中にくすぶっている熱意を伝えて欲しいなと思います。
自分が思うマンガの「面白さ」は誰にも譲れない
ソラジマにいる人は、みんなそれぞれに野心があって、自分が信じる「面白さ」を表現しようと燃えています。
日常生活の中で、あまり熱量の合わない人との会話でふと感じてしまう「冷めた感じ」もソラジマでは全くありません。フィードバックにしても自分の作品のように意見を言ってくれます。そういう環境もあって、入社後早い時期から「ソラジマに入って良かった」と思いました。ソラジマではみんな現状に満足せずに突き進んでいるのがわかるので、「自分だけが頑張っている」ような孤独感がないんです。自分が必死に頑張っていても、周りが「これでいいや」と妥協してばかりだとなかなかモチベーションも保ちづらい。ですがソラジマではそういう人が全然いなくて、日々刺激をもらえるし、熱量高く仕事ができています。
もっとも、私自身は「世界一の編集者になりたい」といった明確な夢を語ることはあまりありません。
ただ、誰が何と言おうと「この部分はこれが面白いから」と自分が信じる「面白さ」を貫きたい、自分の芯を曲げたくないというところは人一倍強いと思います。フィードバックにしてもソラジマのカルチャーに則って、もらうことはもらうけれど、意見を採り入れるかどうかは別問題、とする頑固なところも結構あります(笑) その分成果を出さなければというプレッシャーはありますが、クリエイターさんや周りの編集者さんたちと切磋琢磨しつつ、これからもたくさんの経験を積んで、もっと素晴らしい作品を送り出せる編集者を目指していきたいです。
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