第三編集部
2026.09.03
漫画編集者の採用試験——SORAJIMAの選考5ステップと、各段階で見ているもの

「漫画編集者の採用試験って、何をするんだろう」。そう思って検索された方に、まず結論からお伝えします。
SORAJIMAの漫画編集者選考は、5つのステップです。オフィスにお越しいただくのは1回だけで、それ以外はすべてオンライン。応募から内定まで、およそ4週間です。
この記事では、各ステップで何をするのか、そして私たちがそこで何を見ているのかを、採用に携わる立場からそのままお伝えします。対策の裏技をお伝えする記事ではありません。ただ、読み終えたときに「何を準備すればいいか」がはっきりしているはずです。
目次
選考の全体像——5つのステップ
- 書類選考 — 創作への熱量・文章コミュニケーション力を確認
- 人事面接 — 創作への熱量・口頭コミュニケーション力を確認
- 企画プレゼン — オリジナル漫画企画の作成・プレゼンテーション
- メンバーインタビュー+業務トライアル — オフィスに1日来訪いただき、実務に近い環境での選考
- 内定
(※選考編集部により選考内容が変更になる場合があります)
先に一つ、はっきりお伝えしておきます。この5つのどの段階でも、「編集の実務経験」は確認していません。 学歴も、職歴も、漫画の知識量も、合否を分ける要素ではありません。確認しているのは、創作への熱量と、考える力と、伝える力です。
「そもそも未経験から漫画編集者になれるのか」という段階の方は、未経験から漫画編集者になるには——3つの道と選考の実際もあわせてお読みください。
1. 書類選考——「志望動機」を、テンプレートでは聞きません
何をするか
採用ページの募集要項からご応募いただくと、選考担当者から書類選考のご案内をお送りします。そこで、いくつかの設問にお答えいただきます。
設問は、大きく3つです。
- あなたの夢・目標はなんですか?
- その夢・目標を抱くに至った具体的な出来事や瞬間を教えてください
- その夢・目標を実現する手段として、なぜ編集者というポジションを選ぶのですか?
なぜ、この3つなのか
お気づきかもしれませんが、ここに「弊社を志望した理由をお書きください」という設問はありません。いわゆる志望動機を、テンプレートの形では聞いていないのです。
理由は単純です。「御社の理念に共感し」から始まる文章を読んでも、その人のことが何もわからないからです。共感の表明は、書こうと思えば誰でも書けてしまいます。
私たちが知りたいのは、その手前にあるものです。あなたが何を実現したくて、その願いはどこから来たのか。そして、編集者という仕事がその願いに対してどういう位置にあるのか。
特に3つ目の設問には、「手段として」という言葉を意図的に入れています。ここが、この選考でもっとも大事な一点だからです。
見ているもの
創作への熱量と、文章でのコミュニケーション力です。
熱量、という言葉を使いました。もう少し具体的に言うと、どれだけ物語に心を動かされてきたか、そしてその動きを自分の言葉にできるか、ということです。作品への感動を「面白かった」で終わらせず、何がどう自分を動かしたのかまで降りていける人。それが私たちの探している人です。
準備できること
3つ目の設問に、自分の言葉で答えられるようにしておくことです。
「編集者になりたいから編集者を志望しました」では、この設問は成立しません。「こういう物語で、こういう読者の心を動かしたい。だから編集者という手段を選ぶ」——そこまで具体化できているかどうかが、そのまま答えに出ます。
うまく書く必要はありません。整った文章より、その人の実際の熱が伝わる文章のほうが、私たちにはずっと価値があります。
2. 人事面接——書類の回答を、深く掘ります
何をするか
オンラインでのビデオ通話で実施します。書類選考でご記入いただいた内容をもとに、そこに書かれた思いや考え、経験を深掘りする質問をさせていただきます。
オンラインでの実施になりますので、通話ツールの接続確認と、通話環境の確認だけは事前にお願いします。
よく聞かれること
大きく、3つの方向から伺います。
① 書類選考の回答の深掘り
書類でお答えいただいた夢・目標、その原体験、そして「手段として編集者を選ぶ理由」について、さらに踏み込んで伺います。
書かれた言葉の背後にある実際の出来事や感情を知りたいので、「そのとき何を感じたのか」「なぜそう思ったのか」を、繰り返しお聞きすることになります。深掘りされるのは、あなたの回答に私たちが関心を持っている証拠だと思ってください。
② 編集者になるために、何をやってきたか
「なりたい」という気持ちを、これまで何かしらの行動に変えてきたかを伺います。
この記事の前半で「編集者になること自体が目的の方は選考を通りません」とお伝えしたので、矛盾するように聞こえるかもしれません。でも、聞きたいことは違います。本気の願いは、たいてい何かしらの行動として痕跡を残しています。 その痕跡を知りたいのです。
資格や実績である必要はまったくありません。作品を作った、企画を書いてみた、作品分析を書き溜めた、誰かに読ませて感想をもらった——形は問いません。「思っていただけで、何もしていなかった」という方には、ここで手が止まってしまいます。
③ 辛いときでも、あなたを支え続ける・突き動かし続けるものは何か
これが、私たちがもっとも深いところを聞く質問です。
作品づくりは、うまくいかない時間のほうが長い仕事です。企画は何度も没になり、思ったように読者に届かないこともあります。そのときに折れずにいられるかどうかは、能力ではなく、その人の内側に何があるかで決まります。
この質問に、用意した答えは届きません。だからこそ、正直にお答えいただきたい質問です。うまく言葉にならなくても構いません。言葉を探しながら話してくださる時間そのものが、私たちには意味を持ちます。
見ているもの
創作への熱量と、口頭でのコミュニケーション力です。
書類で見たものを、今度は対話で確かめる場だと考えていただければと思います。文章では整えられることも、対話では整えきれません。逆に、文章が得意でなかった方の熱が、話すと一気に伝わることもあります。
準備できること
対策より、自然体です。 つくった答えを用意されると、かえって深掘りができなくなり、私たちがあなたを知る機会が減ってしまいます。
そのうえで一つだけお勧めするなら、好きな作品について「なぜ面白いのか」を自分の言葉で説明する練習です。作品を挙げるだけでなく、その作品のどの仕掛けが、誰の、どんな感情を動かしているのか。これは編集者の仕事の最小単位そのものなので、面接に限らず、この先ずっと使えます。
なお、③の質問だけは、準備してもあまり意味がありません。自分の内側を、面接の前に一度のぞいてみる——それが唯一の準備だと思います。
3. 企画プレゼン——オリジナルの漫画企画を、つくって、話す
何をするか
オリジナルの漫画企画を作成し、プレゼンテーションしていただきます。進め方は2段階です。
① 企画書の作成・提出
どういう企画を作っていただきたいか、テーマはこちらからお渡しします。ゼロから何を出せばいいか迷う選考ではありません。あわせて、あなた専用のGoogleスライドのリンクをお送りしますので、そこに企画書を作成してください。
- 提出期限は5日間です
- 分量の指定はありません。必要なだけ使ってください
② プレゼンテーション
企画書が通過した方に、その企画を実際にプレゼンしていただきます。
分量を決めていないのは、意図的です。何ページ書いたかを見たいのではなく、その企画を成立させるために何が必要だとあなたが考えたかを見たいからです。5ページで足りると判断したなら5ページで構いませんし、そう判断した理由のほうが大事です。
見ているもの
企画そのものの完成度ではなく、そこに至るまでの考え方と、話の筋道です。
なぜこのテーマからこの企画に行き着いたのか。誰に、どんな感情を届けたいのか。その狙いを実現するために、どの仕掛けを選んだのか。企画書に書かれた結論よりも、その結論を支えている思考のほうを見ています。
だから、思いつきの面白さで勝負する必要はありません。むしろ、面白さを説明できることのほうが、この選考では効きます。
準備できること
リサーチです。テーマを受け取ったら、そのテーマに関係する作品や、読者のいる場所を、時間をかけて調べてください。
編集者の仕事は、思いつきを形にする仕事ではありません。誰かの心を動かすための道筋を、根拠を積んで設計する仕事です。その働き方が、この選考でそのまま試されます。
4. メンバーインタビュー+業務トライアル——オフィスで、1日

何をするか
選考の中で唯一、SORAJIMAのオフィスにお越しいただく日です。この日は、2つのことを行います。
- メンバーインタビュー……現場の編集者・社員との座談会です
- 業務トライアル……実務に近い環境で、編集業務を体験していただきます
見ているもの
一つは、入社後に力を発揮していただけるか。もう一つは、あなたにとってここが合う場所なのかです。
後者を軽く見ていません。この日は、私たちがあなたを見る日であると同時に、あなたが私たちを見る日です。現場の編集者が実際にどう働き、どんな言葉で作品の話をしているのか。それを見て「ここで働きたい」と思えるかどうかは、入社後の全部に関わります。
仕事の中身を先に知っておきたい方は、Webtoon編集者の仕事内容——作品を、どこまで遠くへ届けられるかをご覧ください。会社そのものについては、SORAJIMA Entrance Bookにまとめています。
服装はスーツでなくて構いません。ご自身らしい服装でお越しください。
準備できること
準備というより、当日の構えの話になります。
「見られる日」ではなく「見る日」だと思って来ていただけると、この日は一番機能します。 疑問はその場で聞いてください。仕事の実際を知るために来ている、というくらいの姿勢が、私たちにとってもありがたいです。
5. 内定
ここまでの選考を通過された方に、内定をお伝えします。
給与や勤務条件のすり合わせについては、最終選考のあとに、別途あらためて面談の場を設けています。選考フローの中には入れていません。ご不安な点は、その場で遠慮なくお聞きください。
なぜ、これだけのステップを踏むのか
「4週間、5ステップ」と聞くと、長いと感じる方もいると思います。ふるいにかけて人数を絞るための関門が並んでいるように見えるかもしれません。
そうではありません。
私たちは、優秀な人を厳しく選び抜きたいのではなく、ここが合う人を見つけたいのです。 そして「合う」かどうかは、書類と1回の面接ではわかりません。企画をつくってもらって、実務に近い場に一緒に立ってみて、現場の編集者と話してもらって、ようやく双方が判断できることです。
短い選考で入社を決めて、入ってから「思っていた仕事と違った」となるほうが、お互いにとって、はるかに不幸だと考えています。だから、時間をかけます。
選考は、見極める場ではなく、見極め合う場です。
収入の実際
選考の話とあわせて、条件も隠さずお伝えします。
SORAJIMAの漫画編集者の年収は、420万〜1,700万円(賞与込み)です。未経験からのスタートかどうかで決まるものではなく、ヒットを生み出した人が報われる設計になっています。
準備は、この3つで足ります
選考全体を通して、準備としてお勧めしたいのは次の3つです。特別な対策ではありません。
- 「なぜ面白いのか」を自分の言葉で語れるようにする……好きな作品を挙げるだけでなく、その作品のどの仕掛けが、誰の、どんな感情を動かしているのかまで降りる。編集者の仕事の最小単位です
- 創りたいものを言葉にする……「編集者になりたい」ではなく、「こういう物語で、こういう読者の心を動かしたい」まで具体化する。これが書類選考の3つ目の設問への答えの芯になります
- 0→1の経験を棚卸しする……職種は問いません。企画でも、部活でも、個人の創作でも。自分で立ち上げて、形にして、誰かに届けた経験は、そのまま編集者の素養の証明になります
最後に
この記事でお伝えしてきたことを、一つにまとめます。
私たちが選考で見ているのは、あなたが編集者になれるかどうかではありません。あなたが、創りたい作品のために編集者という手段を選ぶ人かどうかです。
編集者という肩書きは、作品を創るための道具にすぎません。それがゴールになっている方は、入社した瞬間にゴールテープを切ってしまいます。その先にある、作品づくりの終わりのない試行錯誤を支える燃料が、そこにはないからです。
もし、この記事を読んで「その考え方はわかる」と思えたなら、選考でお会いできることを楽しみにしています。
経験は問いません。作品への執念だけを持ってきてください。