クリエイター
2025.08.30
“喋る本”から始まる物語『100の魔石の大賢者』原作・長月観先生インタビュー

はじめに
こんにちは!デジタル漫画出版社ソラジマの広報チームです。
2025年8月30日、長月観先生が原作を務める『100の魔石の大賢者』がソラジマTOONをはじめ、LINEマンガ・めちゃコミック・ebookjapanで連載開始しました。
本作は長月先生の商業デビュー作。ソラジマの公募を経て、編集者と企画を磨き上げること約2年。満を持してのスタートです。
さらに、本作のネームとキャラクターデザインを手掛けるのは、人気漫画『GetBackers-奪還屋-』の作画を担当したベテラン漫画家・綾峰欄人先生。
新連載を記念して、今回は長月先生にデビュー前の活動や兼業作家ならではの仕事術、綾峰先生とのコラボ秘話まで、たっぷりとお話を伺いました。
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目次
創作の原点と、ソラジマへの応募のきっかけ
まずは、長月先生が創作活動を始めたきっかけを教えてください。
初めて小説を書いたのは小学生の時で、本格的に小説を書き始めたのは中学〜高校生の頃です。
私は読書感想文が苦手だったのですが、読書感想文のほかに小説を作品として提出していい学校だったんです。そこで「じゃあ小説を書いてしまおう」と書いたのが始まりでした。
趣味でWebへの投稿を始めたのはいつ頃ですか?
大学で文芸サークルに入り、仲間内で同人誌を出していたのですが、サークルの同期から「pixiv」*や「小説家になろう」*という文化があると教えてもらったんです。そこで初めて「pixiv」に登録し、自分でも書いてみたいなと思って投稿を始めました。
社会人になってからは筆を折っていたのですが、ご縁あり活動を再開。そこから自分でも「カクヨム」*に投稿するようになって、今に至ります。
pixiv・・・イラスト・漫画・小説などを投稿・閲覧できるクリエイター向けSNSです。 |
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今回初の商業デビューということですが、きっかけを教えてください。
たまたま時間が余る期間があり、「何か面白いことしたいなぁ」という気持ちでいた時にソラジマのクリエイター公募を見つけました。
「未経験でも作品を発表できる機会がこんなにも転がっているものなのか」という思いと、「受かったら面白いな」という気持ちで登録したんです。
それが2023年4月頃。ちょうどソラジマ側も積極的に公募をかけている時期だったようで、募集しているものすべてに応募しました。

公募で提出した企画をブラッシュアップして、本作が完成しています。その過程を教えてください。
受かった公募は、王道のバトル漫画の企画をスライド1枚で作るというものでした。
ただ、私が好きな作品や書いていた作品は王道から少し外れたものが多くて。まずは「王道」を知らなくてはと思い、そのすり合わせから始めました。ソラジマから頂いた資料などを参考に修正し、1本の企画書に仕上げて今の形になっています。
採用が決まった時のお気持ちは?
今でもまだ覚えています。
採用の連絡を頂いたのが7月7日の七夕の日で、とても運命的だなと。
まさか受かるとは思っておらず、嬉しいという気持ちよりも「何事だ!?」という驚きでいっぱいでした(笑)。
キャラクターへのこだわりと愛
キャラクター作りにはどんなこだわりをお持ちですか?
心理学を専攻していたこともあり、キャラクターを作る際には生まれてから現在に至るまでの生育歴や家族構成はもちろん、その人物の特性や抱えている課題といった心理的な部分まで設定します。
キャラクターを愛しているからこそ、彼らには課題を乗り越えてほしいですし、課題を乗り越えていく姿も物語にしたら面白いだろうとも思っているんです。それを踏まえながらキャラクター作りに取り組んでいます。
あとは、必ず大人が「大人としての役割を持っててほしい」という想いがあります。
王道のバトル漫画って16〜17歳くらいの少年たちが世界を救うために戦うことが多いですが、やっぱり彼らも“少年”であり、“子ども”でしかない。だからこそ、保護者が支えになってほしい。
本作でも保護者的立ち位置のキャラクターが登場します。少年たちにとって“支えでありながら、同時に乗り越えるべき壁”となる存在です。そういった壁を乗り越えて、少年たちが大人になっていくストーリーにしたいと考えていました。
その保護者的立ち位置のキャラクターを綾峰先生がデザインしてくれて、ネームで拝見した時は「勝ったな」と(笑)。
このキャラデザで、この立ち位置のキャラクターはもう最高だと思いました。

本作でも主人公・トーリや、その兄のネイルをはじめ、課題を抱えているキャラが多く登場します。本作のキャラクター作りで、特に意識したことはありますか?
先ほどもお話した通り、「壁を乗り越えてほしい」という想いがあって、キャラクターそれぞれに人間関係を含めた課題を設定しています。
主人公・トーリにはモデルがいて、そのモデルに楽しく人生を過ごしてほしいという祈りを込めて作りました。そのモデルが誰かは内緒です(笑)。

ネイルに関しては、本作の前に企画していた作品のモブキャラのデザインがとっても私好みで、「このキャラクターを主人公のライバルや、乗り越えるべき壁にしたい!」と思って生まれたキャラクターです。
そのモブキャラのデザインを担当してくれたのが綾峰先生で、本作には綾峰先生のデザインのおかげで生まれたキャラクターがたくさんいます。
謎のキャラクターとして登場する“喋る本”・ヒゲについても教えてください。

ヒゲについては、当初は何も考えていませんでした。ただの攻略本のようなものを考えていましたが、編集の中畑さんとの打ち合わせの中で「この本が喋ったら面白いのでは?」という話になったんです。
そこから、“謎の案内役でキーパーソン”という設定で肉付けをしていきました。
着彩にもこだわりを反映したとお聞きしました。
世界観の文化背景から考えられる色があるので、キャラクターの衣装の色などは指定させていただきました。
今回、ハイファンタジーを書くのが初めてだったので、執筆にあたって神話や世界史、地形の資料などを読み込みました。「この物語は何世紀あたりの文化背景なのか」を明確にし、世界の土台を固めておかないと自分自身が混乱してしまうと思ったんです。
そうした背景を意識して執筆した結果、カラーリングの指定に至りました。さらに、各キャラクターにはイメージカラーも設定しています。
キャラクターを通じて、読者にどんな気持ちを抱いてほしいですか?
当初はいろいろ考えていたのですが、いざ公開を前にすると、どう感じてもらっても構わないと思っています(笑)。
わがままを言えば、どのキャラクターも愛してもらえたら嬉しいですね。読みながら、「頑張れ!」と応援していただけたら。

兼業作家としての挑戦
長月先生は現在、執筆活動とは別に本業のお仕事もされています。どのように両立しているのでしょうか。
本業は心理学に関係する仕事で、そちらのキャリアも諦めたくなくて兼業作家の道を選びました。
私の場合、曜日で管理するほうがやりやすいので、創作と本業で曜日を分けています。さらに、「この曜日の、この時間は執筆時間」と細かく時間を決めています。
BGMを聞きながら執筆するタイプなので、YouTubeでだいたい3時間ほどの作業用BGMを流し、その間は執筆するというルーティンです。
モチベーションの維持はどうしていますか?
今回に関しては、初めて「お仕事」として頂いたものなので、ご期待に応えたいという気持ちが一番です。
あとはオタク根性で申し訳ないですが、綾峰先生のネームが読みたくて作業しているところもありますね(笑)。
兼業だからこそ描ける世界やキャラクターへの影響はあると思いますか?
ずっと心理学に携わってきたからこそ、「このキャラクターはこういう特性と過去があるから、こんな行動や反応をするだろう」といった想定ができます。
ただ、逆にそれが弊害になることもあるんです。
キャラクターの心理に沿いすぎると、リアルさが増しすぎてエンタメとして成立しにくくなる。セリフ回しも現実味がありすぎて、かえって世界観に入り込めなくなってしまうんです。
そのため、行動の根拠は心理学に置きつつ、セリフはエンタメ寄りにすることを意識しています。「こういうセリフがあったら、すごく盛り上がるよね!?」という勢いとノリで書いていくと、キャラクターがより躍動していきますね。
共同作品は、制作チームとの“セッション”
商業作品における「共同制作」の面白さと難しさを教えてください。
私は今まで趣味で書いてきたので、どうしても構成やキャラクターに“手癖”が出ます。
手癖で作る作品の良さは、「これは確実に面白い」と自分の中で確信を持てるところです。
でも今回の作品は、共同制作かつ商業作品。自分の手癖だけの作品ではありません。だからこそ、「自分が面白いと思う」だけでなく、「売れるものを作らなければならない」という意識が芽生えたんです。
特に企画の初期は、その意識が強くて少し厄介でしたね。
「これは本当に売れるのだろうか」と不安になることもありました。でも、綾峰先生のネームを見た瞬間に気持ちが晴れたんです。
共同作品は、音楽のセッションのようだと思っています。私が起点となる原稿を書き、綾峰先生がネームに起こす。そこで、「ここは面白い」「これは売れる」と思った部分を描き出してくれる。そこに編集の中畑さんが加わって企画を揉み、線画さんや着彩さんなど多くの人が次々と関わることで、楽しくて面白い作品となって世に出ていく――そう感じました。
これはもう、原作者の役得ですね。
演奏者がそれぞれ楽器を担当して作り上げる音楽と同じように、Webtoonもいろいろなクリエイターが集まって作品を生み出す。その醍醐味を感じたのですね。
そうですね。
特に、まだ自分だけの頃は、どうなるか見えない時もありました。
でも、制作チームが編成されていくに連れ、いろいろな楽器の音色が加わって曲が完成していくようで、とても楽しかったです。
そんなセッションを繰り広げる中で、印象に残っているエピソードなどはありますか?
伏線を作るのが好きで、「シェアード・ユニバース」のように独立した作品だけど、すべて読み通すと一つの筋になっている作品を書きたくなるんです。
でも、中畑さんから「Webtoonは単話売りが基本なので、1話でいかに爽快感を出せるかが大切。特に無料で読める1〜3話までは、読者の人にスカっと気持ち良くなってもらうことが肝心です」とアドバイスをいただきました。
その話を聞いた時、「なるほど」と思って、とても印象に残っています。
ほかにも、中畑さんに初めて脚本をお渡しした時、「長月さんには筆の力がありますね」とおっしゃっていただいたことがあり、それが本当に嬉しくて、今でも宝物です(笑)。
ベテラン漫画家・綾峰欄人先生とのコラボレーション
ネームとキャラクターデザインをベテラン漫画家の綾峰先生が手掛けると聞いた時、どんな心境でしたか?
その瞬間は、もう忘れられません。
中畑さんから「ネーム担当が決まりそうです。ベテランの綾峰欄人先生です」と聞いて、ネームを拝読したんです。その時の感動と衝撃は筆舌に尽くしがたく、私が棺に入る時まで忘れないと思います(笑)。
私は登場人物や世界観が絵で浮かんでくるタイプなのですが、それが実際に視覚情報として得られ、実感を伴った瞬間、本当にとんでもないことなんだなと。
これが毎話、形になるなんて、本当に贅沢なことです。もうオタク冥利に尽きます(笑)。
受け取ったネームの中でも、特に感動した物語のシーンはありますか?
実は初めて綾峰先生から受け取ったネームは、本作ではない別の企画の作品だったんです。その作品は世界観が少し複雑で、私でも具体的なコマ割りまでは想像できませんでした。
でも、綾峰先生が描いた、世界観を説明するためのコマが本当に美しくて。できることならスマホの待ち受けにしたかったです。
それを見た瞬間、「どんな世界観を書いても、必ず投げ返してくれる方だ」と思いました。

作品に込めた想いと今後の展望
『100の魔石の大賢者』を通じて、何を読者に伝えたいですか?
もう作品を目に留めていただければ、それだけで嬉しいです。さらに、キャラクターたちが愛されればもっと嬉しいですね。
私にとっては主人公側もヴィラン側もすべて愛しいキャラクターで、全員一生懸命生きています。どのキャラクターたちにも声援を送っていただけたら、それ以上はないです。
今後、挑戦してみたいジャンルやテーマがあれば教えてください。
ホラーは得意ではないので、それ以外なら書いてみたいですね(笑)。
「激重感情の応酬」が好きなので、特にコンビもので「激重感情の応酬」シーンがたっぷり見せられる作品なら、ハイファンタジー・ローファンタジー・現代恋愛もの・ロマファン問わず、書いてみたいなと思っています。
デビュー作を経て、見えてきた「作家としてのビジョン」はありますか?
難しいですね……(笑)。
正直に言えば、細く長く書けるものを書いて、それが楽しいと思える人生であれば、最大の幸福です。
読者へのメッセージ
初めての商業連載にあたっての意気込みをお願いします。
やはり、細く長く愛していただけたら嬉しいです。
欲を言えば、100話まで続けたい(笑)。どうぞキャラクターたちのことを応援してください。
14話一挙公開を楽しむためのポイントを教えてください。
この機会を逃す手はありません。勢い良く読むことが大切です。特に今回はバトル漫画なので、一気にスクロールして読むことで、戦闘シーンの迫力が増すと思います。
さらに、タテ読みならではのフルカラーで、アニメを見ているかのような感覚も味わえます。
通勤や帰りの電車の中、隙間時間など、いつでもかまいませんので、ぜひ楽しんでください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
まずは作品に携わってくださったスタッフの皆様に、心より感謝申し上げます。
若輩者の自分がここまで作品を形にできたのは、編集の中畑さん、ネームを担当してくださった綾峰先生、そして制作チームの皆様のおかげです。関わってくださったすべての方に、ビッグリスペクトとビッグラブを送ります。
そして、作品に目を留めてくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。本当は一人ひとりにビッグハグを贈りたいところですが、それは叶いませんので、文字書きとして物語を紡ぎ続けることでお応えできればと思います。
今後、トーリ、ネイル、クレッグ、カハールなど、さまざまなキャラクターが登場予定です。どうか彼らのことを可愛がっていただければ幸いです。
作品紹介
『100の魔石の大賢者』(原作:長月観 ネーム・キャラクターデザイン:綾峰欄人)

©︎ 長月観・綾峰欄人 / SORAJIMA
▼あらすじ
生活魔法しか使えない少年・トーリは、病気の兄を支えるため、冒険者ギルドで下働きをしていた。
倒せるのはスライム程度で、得られる魔石もわずか。
日銭を稼ぎながら、ギルドメンバーからの理不尽な扱いに耐える毎日を送っていた。
そんなある日、彼は洞窟で“喋る本”と出会う。
「キミは“本物の魔石”を取りたくないか?」
その言葉が、トーリの運命を大きく変えていく。
——生活魔法使いの“魔石無双”譚、ここに開幕!
▼本編はこちらから▼
【ソラジマTOON】https://sorajimatoon.com/comics/01K3MQZZ7W8HTNB1ZYE9D1G9C5
【LINEマンガ】https://u.lin.ee/KRXvcPh/pnjo
【めちゃコミック】https://mechacomic.jp/books/213817
【ebookjapan】https://ebookjapan.yahoo.co.jp/books/916072/
おわりに
長らく趣味として続けてきた執筆活動が実を結び、見事デビューを果たした長月先生。
キャラクターへの深い愛情と、緻密に世界観を練り込む姿勢が印象的でした。
さらに、制作チームとの“セッション”を楽しみながら、一つの作品を生み出す――そんなWebtoonならではの醍醐味を心から感じている様子も伺えました。
そんな長月先生が紡ぎ出す『100の魔石の大賢者』、どうぞお楽しみください!
そして今回、長月先生が公募をきっかけに才能を発掘されたように、これを読んでいる皆さんの中にも眠る才能があるかもしれません。
「原作者として活躍したい」「好きを仕事にしたい」と思っている人は、ぜひソラジマにご応募ください。
そしてそんな才能を見つける編集者志望の方も引き続き募集しております。
あなたの才能を、最大限に発揮させましょう!
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